1.まえがき
今年(2024年)からトライアスロンに挑戦するにあたって、最初に心に決めたのは「できるだけ自転車にはお金をかけない」ということでした。実際トライアスロンバイクなどにこだわり始めると、ものすごい金額がかかります。トライアスロンに出るのも一年に数回だと思うと、50歳を超えている私がレースに出ることも多くないと思い、あまり出費する意味も感じませんでした。
ただ、初トライアスロンとして3月24日の台東プユマトライアスロン51.5kmに申し込んでしまったので、とりあえず練習しないと不安です。本番はレンタルサイクルでいいだろうと思ったので、台湾のネット通販で一番安いロードバイクを探して、1月4日に練習用に買ったのがこちら【冠鑫自行車】MINGREN 星速 700c SHIMANO 21速 彎把 公路車。送料込みで4980元、日本円で2万3千円くらい。アルミロードで12kgくらい。その後、レンタサイクルがうまく見つからなかったので、初トライアスロンは結局このアルミロードで出場。バイク40キロを1時間27分2秒、平均時速27.6km/hで走りきり、最終的には3時間32分44秒でゴール。部門別順位では660人中41位と、初挑戦にしてはかなり良かったです。ただしスイム37位、ラン46位だったのに対してバイクは182位だったので、弱点が浮き彫りになりました。【冠鑫自行車】MINGREN 星速 700c SHIMANO 21速
その後も数回トライアスロンに出たのですが、いずれもなかなかの成績で完走。そしていずれもバイクパートが足を引っ張っており、自転車の乗り換えを本気で考え始めました。最初は「できるだけ自転車にはお金をかけない」という信念に従って中古でいいだろうと思ったものの、Facebookなどで掲載されている中古自転車のやり取りには少し怖くて手が出せませんでした。また、今年1月から参加を始めたTRBBトライアスロンチームや友人のお古を買い取るのも一つの手だと思ったのですが、なんとなく「自分らしさ」に合ってない気がしていました。そして、「大学教授クラスのオタク日本人エンジニアなんだから、自分で組むしかないじゃないか!」という結論に達したのでした。
2.MINGREN 星速 改造
実は激安アルミロード「MINGREN 星速」ですが、いろいろ改造しました。ペダルとサドルは買ってすぐくらいに変え、その後ダウンヒルバーも付けました。7月には日本のヤフオクで、ZIPP 404のディープリム・カーボンホイール、105 11速スプロケット付きが55000円(当時のレートだと12500元くらい)で落札できたので、7月末に子連れで日本に帰ったときに台湾まで輪行袋で持って帰ってきました。
前輪はなんら問題なかったのですが、後輪のギアが7速から11速に変わったので、チェーンを交換しないといけませんでした。チェーンを変えると後ろディレイラーが全然合わなくなったので、後ろディレイラーを交換。Shimano 105のRD-R7000 GS-34Tが1380元。ついでだから前ギアとクランクも変えちゃえと、Shimano 105のFC-R7000 52/36T 170mmを3500元で購入。思ったより安いと思っていたのですが、この2つだけでアルミロード一台と同じくらいの値段がかかってます。金銭感覚が、少し麻痺し始めていたんでしょう。
詳しくは書きませんが、この改造段階で自転車は少しおかしくなり始めていました。結局前ギアとクランクは変えれなかったので、前3速、後ろ11速の33段変速という素敵な状態に。しかもシフトレバーは3x7=21速のもののままだったので、トップもローも入らないという状態でした。ただ私の脚力では105のトップは重すぎるし、105のローが入らなくても元の21速のローと同等までにはなったので、あまり気にせず使っていました。しかし、そんな時に事件が発生しました。
9月22日に参加予定の「Force 2024 花蓮太平洋盃トライアスロン 113km」では、バイクで90キロ走る必要があり、しかもアップダウンのあるきついコースだと聞いていました。なので9月1日(日)にTRBBチームの女性Zoeさんたちが主催で、100キロ程度のアップダウンのあるコースを「食べて、飲んで、楽しく」ツーリングに行くというので、付いていきました。前半は軽々ついて行けたのですが、50キロほど走ったあとの最大の坂でハンガーノック。さっき食べた肉まんも胃から吐き出し、両足は吊って歩くことも出来ないくらいでした。同じく女性のKentyさんに水をもらったり、サプリメントをもらったりしながらなんとか復活して、家までたどり着いたものの、散々な状態でした。
9月1日のツーリング(不厭亭)
ただ、かなり良い訓練になったと確信して、9月8日に「2024年宜蘭冬山河トライアスロン51.5km」に参加。51.5kmの距離は三回目なのでだいぶ自信もついてきたことから、スイムもバイクも全力で行ったのですが、バイク40キロを1時間26分44秒、平均時速27.7km/h。初トライアスロンの時から全く進歩していませんでした。
(左)2024年宜蘭冬山河トライアスロン
(右)Force 2024 花蓮太平洋盃トライアスロン
この2つの事件から、私は22日の「花蓮113キロ」を自分の自転車で参加するのは断念して、レンタルサイクルをお願いしました。レース2週間前だったにもかかわらず、フルカーボンのLook585を2000元で予約。安い。やはり当初の計画通り、練習は安いアルミ車、レースはレンタルが正しいのかもしれないと思いもしました。結果、バイク90キロを3時間20分20秒、平均時速27.0km/h、最終的には6時間44分47秒で無事完走。アップダウンの多いコースだったにもかかわらず、なかなか良いタイムでした。やはりカーボンロードだと違うんだということを、痛感しました。ただ、レース後の写真を見ると、自分のアルミロードで出た「冬山河トライアスロン」のほうがカッコよかったです。やはりディープリム車はカッコいい。色も大事。私の場合、マラソンやトライアスロンはタイムの速さより、いかにカッコいい写真が撮れるかのほうが大事だと思っています。なので優しくしてくれたレンタルサイクル屋の親父には悪いのですが、写真写りの良い自転車を自作することを、心に決めました。
3.フレーム選び
フレームについては、日本のヤフオクでかなり安く出ているようだったので、日本で落札して台湾に持ってくる作戦にしました。まずは、トライアスロンバイクにするか、それともロードバイクにするか、悩みました。当初はフレームを変えてもうちの奥さんにバレないように、「MINGREN 星速」と同系統の色をしているビアンキにしようと思っていました。ARIA(アリア)かOLTRE(オルトレ)を狙っていたのですが、高い。フレームだけで15万円以上します。そのうち、日本のトライアスロンバイクメーカーCEEPOのフレームが比較的安くオークションに出ていることを発見。あまり派手な見た目だと奥さんにとても怒られるので、見た目低調なKATANAかSTINGERで待つこと数週間。黒色のSTINGER Mサイズが4万円台で出ていたので、5万円で入札。しかし結局5万円を超えたので断念しました(落札金額は5万1千円だったので、ちょっと残念ですが)。
落札できなかったCEEPO STINGERのフレーム
すると次の週にSCOTTのFOIL 10が6万5千円で出ているのを発見。おいおい、天下のSCOTTのエアロロードだぜ。先月は型番は違うけど、11万円で落札されてるのが、この値段で出ているのは意外でした。そういえば、9月8日の冬山河トライアスロンでは、うちらのチームのボスStevenさんもSCOTTのエアロロードに乗ってたなぁと思いながら、考えました。白と黒だけのFOIL 10、見た目は地味だから、奥さんには怒られないだろう。CEEPOは見た目が派手気味だけど、これなら「安いパーツを組み合わせて作った」と言い逃れ出来そうだ。でも「平地で最速を目指すならこのエアロロード」と言われているFOILシリーズ、性能は文句なし。しかもロードバイクならヒルクライムでも使えるから、やはり最初に作る一台にはトライアスロンバイクはやめてロードバイクにしよう。こう考えながら、入札ボタンをポチッ。結果、他に入札者も現れず、65,000円プラス送料3600円の合計68,600円で落札できました。落札後は、これが安いか高いかはあまり考えないようにして、組み立てるにはあと何が必要かを整理し始めました。
落札に成功したSCOTTのFOIL 10のフレーム
4.四苦八苦しながらの組み立て
組み立ての段階では、あまりにたくさんのことが起きたので、作業に関して細かくは書きませんが、自分への記録のために、それぞのの箇所についての思い出を書いておきます。
(1)ハンドルバーとステム
カーボン製で、ZIPPの文字が書かれているハンドルバーが1200元ちょっとで売られていたので購入。中国大陸から送られてきたのできっと偽物だけど、そこにこだわりはないです。ただし、ステムを取り付ける部分のパイプ直径が31.8mmだったので、「MINGREN 星速」に着いていたものが使えない。ステムだけは最後まで使える、数少ないパーツの一つだと思っていたので、少し悲しみながら新しいステムを購入しました。「カーボン」と書かれているステムが売られていたのですが、白しかなかったのでこれを選択。249元。実はアルミに「カーボン模様」が印刷されたステム。まぁ重さはほとんど影響しないし、良しとすることに。見た目がさらに寄せ集めっぽくなってきてて、自分としては気に入っています。
最初は上下逆に付けてしまったのですが、ステムは地面に平行になるように付けるのがオーソドックスらしいので、ほぼ組み上がってから、ステムは付け直しました。
ハンドルバーとステム
(2)シフトバー
ディレイラーはShimanoの105を準備したので、シフトバーもShimano ST-5800を左右セットで購入。4,329元。高い。これだけで、アルミロードバイク一台の値段に近い。でもトップとローが入らない問題を繰り返さないため、純正にしました。
シフトバー
(3)ディレイラーワイヤー
今回のFOIL 10のフレームはワイヤー内蔵式なので、ちょっと苦労しました。ワイヤーがうまく通らないので磁石でワイヤーを引っ張るケーブルライナーも購入したのですが、後ろディレイラー用の穴が小さすぎて使えず。結局ケーブルライナーは使わず、別のワイヤーを後ろ側から挿して、ボトムブラケット穴あたりでディレイラーワイヤーとマスキングテープで繋ぎ、ディレイラーワイヤーを押して行くという方法を使うと成功しました。
(左)ケーブルライナー (右)マスキングテープで繋いだところ
ワイヤーはインナーワイヤーとアウターワイヤーの両方がセットになって稼働するのですが、シフトバーからボトムブラケットまではアウターワイヤーあり、その先はアウターワイヤーなしとしました。これで良いのかどうかは調べてもわからなかったのですが、今のところシフトチェンジはちゃんと出来るので、良いんだろうと思っています。
(4)ブレーキワイヤー
Shimano 105のシフトバーはブレーキレバーも兼ねており、Shimano ST-5800を買ったときにディレイラーワイヤーは刺さっていたので、ブレーキワイヤーも刺さっているとばかり思いこんでいたのですが、刺さっていませんでした。「MINGREN 星速」のブレーキワイヤーを流用しようと何度もやってみたのですが、失敗を繰り返すうちに長さが足りなくなり、ネットで買いました。100元くらいでした。
ブレーキワイヤー
(5)ボトムブラケット
今回一番苦労したのがコレ。最初は「MINGREN 星速」の改造用に買って使えなかった、シマノのねじ込み式ボトムブラケット「SM-BBR60」が使えることを期待したのですが、なんだか全然あわない。そのうちネットで圧入式の「BB SM-BB71-41B」を使って組んだと紹介している人がいたので、全く同じものを購入しました。圧入工具も買って付けようと思ったら、それでもあわない。なぜだろうと思ってフレームをよく見てみると、フレームの穴に何かのリングが付いたままでした。カッターナイフとピンセットを駆使してこれを外したあと、これなら「SM-BBR60」も使えるんじゃないかとも思ったのですが、失敗すると怖いので「BB SM-BB71-41B」を圧入。ネットではかなり技術が必要だと紹介されていましたが、思ったよりスムーズに、失敗せずに圧入することが出来ました。
ボトムブラケットと作業光景
(6)前ギアとクランク
こちらも「MINGREN 星速」の改造用に買って使えなかった「Shimano 105 FC-R7000」を流用。一般的にロードバイクフロントギアの歯数は50-34Tが主流だと言われていますが、私がこのバイクに期待するのは平地の速度なので、あえて重めの52-36Tを購入。クランク長さは身長171cmの私にとっては標準的な、170mmとしました。
前回使えなかった原因は単純に、ボトムブラケットが合わなかったからなので、今回はなんの問題もなく使えました。クランクが軽くなるのは、すごく実感出来ました!
前ギアとクランク
(7)前後ディレイラー
後ろディレイラーは、「MINGREN 星速」に付けていたShimano 105 R7000 RD-R7000を流用。前回で慣れていたので、後ろはとてもスムーズでした。後ろディレイラーにつながるアウターケーブルの長さとシフトチェンジのスムーズさには関係があるということで、ネットで「30~32センチ」と書かれていたので、何も考えず31センチに切断。ちょっと長い気もするものの、スムーズに11段全部入るので、コレでよしとしました。
前ディレイラーはShimano 105 FD-R7000を。今回のFOIL 10のフレームは直付け出来るので、取り付けるのは簡単でしたが、調整時に調整ネジを回しすぎて破壊してしまいました。なので同じものをもう一つ買って、ようやくうまく収まりました。
前後ディレイラー
(8)バーテープ
バーテープは最初黒いのを準備したのですが、自作っぽさが無くなると思い、色が緑から紫に変わるバーテープを購入。ちょっと張りが足りなかったのか、重ね量が多すぎたのか、ちょっと短めで終わってしまいましたが、ハンドルの「ZIPP」文字が見えてくるのでいいだろう、と思っています。思ったより簡単だったので、定期的に変えてやってもいいかもな、と思っています。
色が緑から紫に変わるバーテープ(この時はまだ、ステムが上下逆だったのに気づいていませんでした)
(9)反射テープ
最後に、色が「MINGREN 星速」と似ていたほうが奥さんにバレにくいだろうと思い、緑色の反射テープを購入。さすが建築学科出身者のワタシ。こういうのは得意です。色は全く同じにはなりませんでしたが、雰囲気は似せることが出来ました。自作感がさらに上がった感じです。将来、「SCOTTだとあまり見ない色だね」とか言われると、嬉しいです。
2024年10月10日 完成状態
(番外)フォーク
実は「MINGREN 星速」の改造用にと思って、ビアンキのカーボンフォークを買っていました。日本のヤフオクで1万5千円で落札した「Bianchi Intenso リムブレーキタイプ」です。使えない原因は単純に直径が合わなかったことです。今回のFOIL 10では、色を「MINGREN 星速」に似せたいと思い、これを差し込んでみたのですが、うまく入ってしまいました。でも私のFOIL 10の直径は上1-1/8 下1-1/4なのに対して、Intensoのは上1-1/8 下1-1/2。入るけど、ベアリングがあわないので交換が必要だし、ステム上側の長さも長いので切らないといけない。なので今回はあきらめて、次回以降にチャレンジしたいという結論に達しました。でも一度は、GIANTのフレーム+ビアンキのフォークとか、CEEPOのフレームにビアンキのフォークといった、自作感が際立ったキメラ自転車を組立てて、乗りこなしてみたいですね。
FOIL 10のフレームにBianchi Intensoのフォークを挿してみたところ。
5.結論
最後に、かかった費用を整理してみました。アルミロードとフルカーボンの二台を合わせて5万元ちょっと(日本円だと23万円くらい)。よく言われていることですが、普通に中古を買ったほうがおそらく安いです。でも、今回自作したFOIL 10は、フレームとホイールは中古ですが、ボトムブラケットや105フルコンポーネントは現行最新版の新品です。FOIL 10も新車を買おうと思うと80万円以上するので、格安で、しかも実用的なものが手に入ったと思っています。
費用計算表
ただ、自作には自分の練習時間などを割かないといけないので、そんなに多くの時間を使うわけにもいきませんし、新品の上級コンポーネントを揃えた中古自転車だって売っています。なので自作は安くするのが目的ではないです。私は、今回の自作で知り得た知識と技術が、今後私のサイクルスポーツの可能性を広げてくれたと思っていますし、自転車の修理や調整などで、自転車屋さんを頼らなくても良くなったというメリットを強く感じています。なにより、愛着のある、自分らしい自転車が手に入ったというのは、なによりの幸せを感じています。
おそらくこれからも、事故や事件が起こると思いますが、前向きに対処していければと思っています。
ご拝読、ありがとうございました。
組み上がったあと試乗してたら、いきなり友人に見つかりました。